Hakuju Hall主催のコンサート「Hakuju New Style Live~心が喜ぶ演結び 新しい出会いの形へ~塙美里サクソフォン・リサイタル」が開催される。
公演詳細は以下の通り。
日時:2021.10.26 [火] 19:00 開演(18:15 開場)
会場:Hakuju Hall
出演:
塙美里(サクソフォン)
島田彩乃(ピアノ)
演目:
ラフマニノフ:ひな菊 op.38-3
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第21番 ホ短調 K.304
ブロッホ:バール・シェム
ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ 第1番 ニ短調 op.4
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より “青春は遠く過ぎ去り” (レンスキーのアリア)
ブラームス:クラリネット・ソナタ 第2番 変ホ長調 op.120-2
チケット:全席指定:4,000円
チケット取り扱い:
ノナカ・ミュージックハウス 03-5458-1521
主催・お問合せ:
Hakuju Hall 03-5478-8867
火~金 11:00~17:00(※祝日・休館日を除く)
【Wind Band Press特別インタビュー】
WBP:今回のリサイタルはHakuju Hallの主催で、「Hakuju New Style Live~心が喜ぶ演結び 新しい出会いの形へ~」というタイトルがついていますが、このリサイタルの選曲コンセプトをお伺いできますでしょうか。
塙:この「Hakuju New Style Live~心が喜ぶ演結び 新しい出会いの形へ~」というサブタイトルは、白寿ホールの社長さんが、コロナ禍になってからゲリラ的に行っているライブスタイルで、若いアーティストにチャンスを与え、またコンサートに行きにくくなっているお客様にも座席数を半分に減らし安心して聴いていただくという試みだそうです。
選曲については随分悩みましたが、秋のコンサートシーズンということもあり、しっとりと心に響くような作品を集めました。勿論私のメインの楽器であるソプラノサクソフォンを軸に展開し、アルトサクソフォンではアレンジ作品として王道中の王道であるブラームスのクラリネットソナタの2番を。これまで沢山のアレンジ作品にチャレンジしてまいりましたが、大変な難曲作品や思い入れの強すぎるものが多く、なんだか気持ちが強すぎて疲労してしまう部分も正直ありました。
これからは人生を長い目で見て、作品はどれも良い部分がありどれも奏者次第で素晴らしく聴かせられることが出来るのだから何でもやろう、というスタンスに変わりました。
それは昨年コロナ禍の中、文化庁の海外派遣研修制度で1か月スペインに滞在し学んだ部分が大きく、サクソフォン奏者のフェデリコ・コカ・ガルシア氏から「あとはじっくりともう一度自分の“音のなかの音”を見つけるだけだよ。」という言葉を頂き、「ああ、そうだ。」と腑に落ちた感があります。
まさに、「じっくりと音を感じる。」
どんな時間をお客様と共有出来たらと思います。
WBP:前回塙さんにインタビューさせていただいたのは昨年2020年の春でした。その時のインタビューでは、2020年1月のオペラシティのB→C(ビートゥーシー:バッハからコンテンポラリーヘ)シリーズに関するお話の中で、「到底出来そうに無いような高度な技術を駆使する曲に取り組んだ」というお話もありました。今回もサクソフォーンで演奏するのは難しそうな作品もあるかと思いますが、各曲の印象や、聴きどころについてお伺いできますでしょうか。
塙:選曲をしながら、一つ目の質問の回答にも書かせていただきましたが、「じっくりと音を感じる作品」を意識しました。ラフマニノフのひな菊と、チャイコフスキーのオネーギンのアリアは、オリジナルは歌曲なので特にそのような要素が強いと思います。
チャイコフスキーのオネーギンのアリアは、昔フルーティストのエマニュエル・パユ氏と作曲家でありパリ音楽院のフルート科の専属ピアニストである棚田文則氏が演奏しているのを聴き、ソプラノサクソフォンにぴったりで、いつか演奏してみたいと長年思っておりました。
そしてやはりヴィルトゥオーゾの要素も勿論取り入れて、ヴェニャフスキやブロッホなどは特に技術的にも難しくありながらも音楽的にも特徴のある作品です。
ヘンデルのリコーダーソナタは昨年から取り組んでいる作品ですが、バロック作品はこれからも必ずプログラムに入れてゆきたいと思っております。一言でバロックと言えども知られざる作曲家・作品が実は多く、バッハ一族のみならずスペインの作曲家のソレールやフランスの作曲家のブラヴェなどまだまだ掘り起こすと沢山のお宝が見つかり、これから順に取り組む楽しみが出来ました。
ブラームスのクラリネットソナタ第2番は、学生の時に取り組んで以来になります。実は先日パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ管弦楽団にアジア人初の入団をされたクラリネット奏者の宮子雅子さんをゲスト講師に迎え入れ、渋谷のノナカアンナホールにてサクソフォン奏者とクラリネット奏者のためのダブル講師合同公開マスタークラス&ミニコンサートを開催しました。開催の経緯としてはサクソフォン奏者にとってアレンジ作品を勉強することは今現在はもはやごく普通のことだと思うのですが、直接オリジナルの楽器の奏者からレッスンを受ける貴重な機会を提供する事と、両楽器の長所や練習方法をシェアし合うという企画です。例えば一つわかりすい例を挙げますと「ヴィブラート」についてはサクソフォン奏者はほぼ当たり前に、そして人によってはヴィブラートをかけているとう意識がないまま機械的にかけてしまってる人もいるなか、ヴィブラートをかける本当の意味を、ほぼノンヴィブラートで音楽的に作り上げるクラリネット奏者から大いに学ぶものがありました。すべてそれは息の方向性や流れに関わる大事な事です。他にも音の処理や和声の感じ方など私自身も宮子さんと一緒にレッスンをさせていただいて非常に興味深く学ぶものがありました。
ミニコンサートは宮子さんとのリハーサルから今まで感じたことのないくらいエキサイティングなものでした。いろいろとストレスを感じる日々のなかで、私は少なからず不安も抱えていたのですが、宮子さんから飛び出た言葉は「今回こうして演奏できることが楽しくて嬉しくて仕方がない!私は嬉しいんです!」と子供のように無邪気に楽器や私たちと戯れていて、本来アーティストに無くてはならない何かとても大切な感覚・感情というものを改めて呼び起こさせてくれました。ひと夏の忘れられない思い出です。フランスからハードスケジュールのなか一時帰国してくださり一緒に過ごさせていただいた事を心より感謝申し上げます。
WBP:昨年から、世情としては非常に厳しい日が続いています。塙さんも公演の延期があったと伺っていますが、今回の演奏会に足を運ばれる聴衆の方に、特に楽しみにしていてほしいことについて教えて下さい。
塙:コンサートの形態や演奏する人、聴きに行く人、すべてが変わってしまいましたが、それぞれの楽しみ方で音楽を感じていただけましたら幸いです。勿論会場にお越しいただけたらそれはとても嬉しいのですが、常に音楽が生活のポジティブな要素として存在していたらそれだけでとても素敵な事だと思います。私もコロナ禍を通して様々な事を「もう一度見つめなおす」ことが多くなりました。「好きか、嫌いか」「良いか、悪いか」「原料は何か」「美しい・・・ではその美しさはどこから来ているのか」「どうして人は生きるのか」など果てしない疑問が浮かび上がります。しかし音楽を奏で、聴き、何かを感じるとき、言葉に言い表せない自分の感情との出会いはかけがえのないのないものでしょう。
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